環境材に対する考え方
グリーンスチールとは、私たちにとって単一の「エコ商品」ではなく、製造工程の違いによって生まれる複数の選択肢の総称です。同じ電磁鋼板というカテゴリーであっても、メーカーが採用する製造プロセスや素材特性は一様ではありません。私たちは、それぞれ異なるアプローチで低CO2化に取り組むAperamとthyssenkruppの電磁鋼板を取り扱うことで、お客様が「どのような形で環境負荷を下げたいか」「どのような特性を重視するか」に応じて、最適な一枚を選べる状態を目指しています。
Aperamとthyssenkruppのご紹介
なぜ2社材をご紹介するのか?
① 独自の製造プロセスによるCO2削減
Aperamは、南米(ブラジル)拠点の高炉燃料を、自社植林(FSC®認証・ユーカリ約8万ha、Aperam BioEnergia)由来の100%木炭に転換し、化石燃料由来のコークスを使わない製鉄プロセスをすでに稼働させています。「Aço Verde(グリーンスチール)」と呼ばれる、現在進行形の低CO2プロセスです。一方thyssenkruppは、欧州(ドイツ)拠点で水素対応の直接還元(DR)プラント+電気溶解炉(SAF)への転換を推進しており、2045年までのネットゼロを見据えたロードマップに取り組んでいます。同じ「CO2削減」でも、拠点・原料・時間軸の異なる2つのアプローチであり、単一メーカーに絞らず両社を比較できることが、お客様にとっての環境負荷低減の選択肢を広げます。
② 電磁鋼板としての特性の違い
同じ「電磁鋼板」というカテゴリーであっても、鉄損・磁束密度・降伏強度・板厚レンジなどの特性は、メーカーごとの成分設計や圧延・焼鈍プロセスによって異なります。例えば同じ国際規格に基づく「NO30-16」という同一グレード呼称でも、Aperam材とthyssenkrupp材では降伏強度の保証値が異なります(詳細は下表)。用途で求められる特性(低鉄損を重視するか、高強度を重視するか、極薄グレードが必要か等)に応じて最適な一枚をご提案するために、2社材を取り扱っています。



2社材の比較
| 項目 | Aperam(電磁鋼板) | thyssenkrupp(電磁鋼板) |
| 製造プロセスの特徴(CO2削減アプローチ) | 南米拠点:高炉燃料をFSC®認証ユーカリ植林由来の100%木炭に転換(化石コークス不使用/現在稼働中) | 欧州拠点:水素対応の直接還元(DR)プラント+電気溶解炉(SAF)へ転換中(2045年ネットゼロ目標) |
| 代表グレード例(NO30-16/板厚0.30mm) | 最大鉄損 16.0 W/kg(1.0T・400Hz)/最小磁束密度B50 1.64T/降伏強度 400MPa以上 | 最大鉄損 16 W/kg(1.0T・400Hz)/最小分極 1.61T(5000A/m)/降伏強度 420MPa以上 |
| 板厚ラインアップ(電磁鋼板) | 0.25〜0.35mm(EV・高周波材)/0.35〜1.00mm(標準NOES) | 0.20〜0.35mm(powercore® traction、開発中グレード含む) |
| 主な用途 | EV・xEV駆動モーター、発電機、変圧器・配電機器など | EV・xEVトラクションモーター(e-mobility向け) |
電磁鋼板における2社材のご紹介
Aperamの電磁鋼板が「低CO2」と言われる理由は、南米(ブラジル)拠点の高炉燃料にあります。化石燃料由来のコークスの代わりに、自社植林から生産する木炭を100%使用。「Aço Verde(グリーンスチール)」と呼ばれる、現在進行形のプロセスです。

FSC®認証と生物多様性への配慮
① 森林認証と持続可能な調達
Aperam BioEnergiaの植林地はFSC®(Forest Stewardship Council)認証を取得しています。植林地はブラジル政府が1970年代に活用を決定したミナスジェライス州の土地であり、アマゾンの熱帯雨林とは無関係です。植林には遺伝的に選抜されたほぼ不稔性のユーカリクローンを使用しており、植林区画の外に拡散して在来の生態系を乱すリスクを抑えています。
② 生物多様性モニタリング
2006年から継続する動植物モニタリングにより、鳥類約264種(うち絶滅危惧種4種、固有種21種)、中大型哺乳類34種(オオアリクイ・オセロット等、3分の1超が絶滅危惧種)の生息を確認しています。植林地の一部は火災・病害から守られた保護区として、原生林の状態で維持されています。
③ 水資源への配慮
植林は灌漑を抑えるため雨季(10月〜3月)に限定して実施し、40か所・合計約26万m³の雨水貯留池を整備するなど、水資源への負荷を抑える取り組みを行っています。研究によれば、遺伝的に選抜された同社のユーカリの水消費量は、原生林とほぼ同水準とされています。
CO2排出量の実績
FSC®認証(森林管理/Bureau Veritas認証)
南米(ブラジル)拠点の木炭高炉ルートは、スラブ1トンあたりのCO2排出量(Scope1+2)が約0.02トンと、欧州拠点(スクラップ主体、約0.43トン)を大きく下回ります。またAperamグループ全体(南米・欧州拠点平均)のCO2e原単位は粗鋼1トンあたり0.33トンで、ステンレス業界平均(0.93トン)の約1/3、鉄鋼業界平均(1.89トン)の約1/6の水準です(出典:Aperam ESGプレゼンテーション、ISSF/Worldsteel等の外部データとの比較)。
thyssenkruppのグリーンスチール

― 水素還元プラントが拓く未来
thyssenkruppは、欧州(ドイツ)拠点で水素を還元剤とするDR(直接還元)プラントと、再エネ電力で稼働する電気溶解炉(SAF)への転換を進めています。2026年に商用規模のDRプラント稼働開始を計画し、2028年にはDRプラント+SAFの本格稼働・量産体制への移行を見込んでいます。
① 従来の高炉との違い
従来の高炉はコークスを使用し、副産物としてCO2を排出します。DRプラントは水素を還元剤に用いることで、副産物をCO2ではなく水蒸気に置き換えます。液体の銑鉄ではなく固体の「還元鉄(スポンジアイアン)」を生産し、これを再エネ電力で稼働する電気溶解炉(SAF)で溶解して液体の粗鋼にします。既存の圧延・焼鈍工程はそのまま活用できるため、下流工程・製品品質への影響を抑えられる点が特長です。
② 商用化ロードマップ
thyssenkruppは、世界初となる商用規模のDRプラントを2026年に稼働開始する計画を公表しています。その後、2028年頃までにDRプラント+SAFによる本格的な量産体制への移行を見込んでいます。科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi、2024年5月16日認定・1.5℃目標に整合)のもと、2032年までにCO2排出量を2030年比▲38%、2045年までにネットゼロを目標としています。

bluemint® powercore®
Duisburg拠点で製造される「bluemint® powercore®」は、従来品比で50%以上のCO2排出量削減を実現しています(一般品3.8t-CO2/t以上に対し、bluemint®品は1.9t-CO2/t以下)。第三者認証を取得しており、購入企業のScope3排出量削減にそのまま活用できる点が特長です。
- SBTi認定(2024年5月16日、Corporate Net-Zero基準・1.5℃目標に整合)
